icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学28巻3号

1977年06月発行

文献概要

解説

内部灌流法による植物細胞膜特性の研究

著者: 田沢仁1 新免輝男2

所属機関: 1大阪大学理学部生物学教室 2関西医療検査大学校

ページ範囲:P.193 - P.203

文献購入ページに移動
 はじめに
 神経細胞の膜生理学が1961年Tasakiら1),およびHodgkinsら2)の二つのグループがそれぞれ独立にイカの巨大神経の原形質を取り除いて内部を人工液で灌流することに成功してから急速な進歩をとげたことは周知の事実である3,4)。細胞膜の外側だけでなく内側の環境をも自由に制御できることは膜現象の物理化学的理解に不可欠であることはいうまでもない。植物細胞での内部灌流の試みは動物細胞よりもむしろ古い。すでに1935年Blinks5)は海産の緑藻Halicystisの巨大細胞に2本の微小ガラス管を挿入し,細胞内を海水で灌流した。
 植物細胞には動物細胞とは異り,原形質膜と液胞膜の2枚の膜がある。成熟した植物細胞の基本的な構造を図1aに示した車軸藻類の節間細胞の縦断面図を参考にしながら説明する。すなわち外部から内部に向けてセルロースを主成分とする細胞壁(Cw),原形質膜(Pl),ゲル状原形質外質,外質に埋まっている葉緑体(Chl),活発に流動している原形質内質(En),液胞膜(Tp),液胞(Vac)などがある。Blinksの行った内部灌流は実は液胞灌流で,イカの巨大神経で行ったように原形質に相当する部分を灌流したのではない。本論で主として取り扱う車軸藻類の節間細胞は液胞灌流だけでなく,イカで行われたような「原形質灌流」をも容易に行うことができる。本文に入る前に材料の特徴を簡単にのべる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?