icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学28巻4号

1977年08月発行

解説

胃腸膵ホルモン,神経伝達物質としてのペプチド

著者: 菅野富夫1

所属機関: 1北海道大学獣医学部獣医生理学講座

ページ範囲:P.281 - P.289

文献概要

 Ⅰ.ホルモンと伝達物質
 ホルモンという概念が生まれたのは今世紀初頭である。その誕生の様子がMartinによって生々と記録されている2)。彼はロンドン大学で1902年1月16日の午後にBaylissとStarlingによって行われたつぎのような実験を目撃していたのである。イヌの空腸を結紮し神経を切断し,空腸に分布する血管だけを残し空腸を身体の他の部分から切り離す。この空腸内に稀釈HClを注入すると無処置in situの空腸内に注入したときと同様に膵臓から膵液が流出しつづけた。そのとき,空腸と膵臓とをつないでいるのは血流だけであるから,空腸から何か液性の物質が血液中に放出され,その物質が膵臓に作用して膵液を分泌させるものと推定された。BaylissとStarlingはさらにつぎのような実験を行った。空腸粘膜を剥離し,0.4%HClを加え,磨砕し濾過した液をイヌに静注するとやはり膵液の流出が持続するようになる。このように身体の一部から血液中に放出され,身体の他部に効果を及ぼす物質をホルモンと呼ぼうと1905年のCroonian lectureでStarlingが提案したのである2)。このとき彼は化学伝達説についても示唆しているのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら