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文献詳細

雑誌文献

生体の科学28巻4号

1977年08月発行

文献概要

解説

色素細胞内顆粒の輸送機構

著者: 松本二郎1

所属機関: 1慶応義塾大学生物学教室

ページ範囲:P.290 - P.297

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 Ⅰ.体色変化の効果器としての色素細胞
 自然は時折,われわれに思わず目を見張るような劇的な出来事を見せてくれる。そんな現象の一つに動物の体色変化をあげることができよう。体色変化という機能は,動物が外敵から身を守るために環境の色調に体色を調和させるのに役立つ保護色の形成とか,天敵の威嚇とか,外界の日照量や紫外線量の変化から体内の恒常性を保つための調節とか,あるいは個体間の識別や異性の誘引信号として生命維持という生物の設計意図に合目的な意義をもつと考えられる。
 体色変化の効果器は色素細胞であるが,色素細胞とそれに付属する制御装置の構築や機能は種によって異り,系統発生的にはいくつかの型に分けることができる1,2)。たとえばイカやタコなど軟体動物では色素細胞は運動性をもたない単なる色素物質の容器として存在し,この細胞に付属する筋肉細胞が神経細胞からの刺激によって収縮することで他律的に伸縮し体色変化を惹き起している。この構築は脊椎動物にみられる体色変化の装置とは基本的に異っており,本稿では魚類,両棲類,爬虫類などの変温脊椎動物で観察される体色変化の効果器としての色素細胞が対象となっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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