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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学3巻6号

1952年06月発行

雑誌目次

巻頭

事實と理論

ページ範囲:P.233 - P.233

 18世紀は,科學史家に云わせれば"理論と體系の時代"(The Age of Theories and Systems)であつて,科學が,動きのとれない體驗や觀察から脱して,輝かしい理論と體系へ進展した時代だというのである。
 18世紀の初頭こおいて,地球の形は,引力の法則の主張するごとく,扁平であるとするNewton學派と,不正確な測定にあざむかれて扁長であるとするCassini一派とのあいだに,長い論爭がくりかえされていた。この問題に解決を下しうるのは,直接の實地觀測のみであつた。この科學上の問題を決定すべき大仕事をやつてのけたのが,モーペルチュイ(Maupertuis)であつた。

展望

ムコ蛋白とムコ多糖類の生理

著者: 正宗一

ページ範囲:P.234 - P.242

 用語の關係,條項配列の關係などもあるので先ず此等物質の化學についてごく概要を述べその詳細は主題の趣旨に從つて可及的避け重要と思はれる文献を擧げるに止める。なおここに記載するところは動物性のものに限局する。

論述

人の赤血球の構造と溶血現象に就いて

著者: 丹野楯彦

ページ範囲:P.243 - P.250

 Ⅰ 緒言
 數年の間私共の教窒で人の赤血球に就いて電子顯微鏡により微細構造を,2)3)7)9)10)12)分光分析により赤血球表面の無機元素成,吸着性,4)透過性等を,溶血實驗により赤血球と媒質との關係1)等に就いてしらべてみた結果,赤血球の構造とその構造から説明せられる溶血機轉について以下にまとめた樣な概念が得られたと思う。
 併し此の問題に就いては研究者によりそれぞれの實驗的立場から色々の異論が多い事と思われる。又同じ樣な考え方を根底として研究を進められる人々も數多い事と思われる。從つてここに述べるものは新らしい考え方の提出ではなく從來から研究者の心の中にあつた一つの考え方に對して或る程度の實驗的根據のいくつかを加えたものと考える。

心臓の新陳代謝に關する研究

著者: 橋本虎六

ページ範囲:P.251 - P.258

 Ⅰ 序
 心臓の研究は醫學の最も古い課題に屬する。しかも今日尚旺んに追求されて居るものゝ一つでありいつの時代に於ても醫學の中心課題をなして居る。結局,心臓の機能の如何が臨床に於ける生死の運命を決する場合が多いから,絶えず心臓研究に對して拍車が加へられる結果であらう。歐米に於てはこの方面の研究に對して強力な財團の後援があり,專門誌の刊行があるばかりでなく,生理學,生化學,藥理學の專門誌に業績の發表が相次ぐ有樣である。この樣に各方面から追ひ廻してしかも尚我々に研究すべき餘地があるのであらうか。筆者が,心臓の研究を始める時に,やらうかやるまいか甚だ迷つた第一の事は研究の見通しであつた。心臓は研究の對象として取りつき易いのは一見して誰れにでも判る。しかし取りつき易いと思はれる範圍に於ける,心臓機能の研究は,殆ど重箱の隅をほじり出す位になされて居て,新に研究すると云つても高々追試に過ぎない。生物學に於ける色々な説各種の藥物,各種の研究方法が新しく發表されれば,殆ど必ずと云つて良い位,心臓への應用が先づ試みられて居る。であるから,餘程の斬新な考へをもたない限り,手取早く道具立の出來る範圍内での研究は餘り學界に寄與する事は多くない。心臓研究を歴史的に見ると,現世紀に入つて大きな二つの頂上がある。一つはEinthovEnに始まる心電圖,他はStarlingに始まる動いて居る心臓の呼吸に關するものである。

綜説

AcetylationとCoA覺え書

著者: 關根隆光

ページ範囲:P.259 - P.268

 筆者は神經の興奮傳導のChemismusに興味を持ち,特にAcetylcholine(Ach)の分解合成に注目(1,2)してゐたのであるか,偶々その合成機構にAcetylation coenzyme(CoA)が介入してゐるので,以前から文献を集めては覺え書風のものを書留めてゐた。生化學の方々にとつては決して目新しいものではないが,この方面に興味を持たれる藥理・生理の方々の御參考までにと,敢へて筆を執つた次第である。解り易く筋を通さうとした爲,相當重要な文献まで除いたので,所謂總説ではないことを始めにお斷りして置く。又當然取上ぐべき文献を見逃してゐることゝ思ふので,諸先輩の率直な御批判を賜り度いと思ひます。

報告

脳下垂體後葉ホルモンの抗利尿成分—特にその檢定方法に就いて

著者: 小畑英介

ページ範囲:P.269 - P.272

 抗利尿作用の検定には犬,兎,ラツテ,マウス等が使用され,何れもその方法は類似しているが動物各個體の變動に依る誤差を少くするため成る可く多數の動物群の平均値を採る必要上,ラツテ,マウスの如き小動物の方が適當であるとされて居る。Gibbsはマウスに依る方法を提唱したが,Burnはマウスでは尿量が餘りにも少いがらラツテを使用するのが最も良いと唱えた。爾來現在に到る迄この方面の研究にはBurnの原法又はその變法が最も多く用いられている樣である。
 吾々は腦下垂體後葉ホルモンの抗利尿成分をinactivateする物質が妊婦血中に存在するのを追究する目的で,實驗を行いつゝあり,その成績に就てはは別途に發表の豫定であるが,茲には對照實驗として行つた,Pituitrin,Oxytocin及びVasopressinの抗利尿作用に關する動物實驗成績,就中その實驗方法に就いて述べ,又之と併行して行つた人體實驗の成績に就いても少しく述べて見たいと思う。

減壓神經反射肝臓血管

著者: 錢場武彦 ,   岸良尚

ページ範囲:P.272 - P.275

 Ⅰ 緒言
 減壓神經刺戟により,一般に末梢血管は擴張するが7),就中内臓神經領域の血管擴張が大きい影響を持つと云われている1)4)
 然しながら,この時の内臓諸器官の血管が一様に擴張することは,必ずしも證明されていない。即ち腸1)3),脾臓5)12)に於ては血管の擴張が一般に承認されているが,腎臓に就ては血管が擴張すると云うものと,7)變化しないと云うも1)2)8)12)のとに意見が分れている。又肝臓に就ては僅かに兎を用いた原田6)及びRichter9)の實驗があるのみで,何れも肝臓容積の増大,即ち血管擴張を報告している。

膀胱の活動電流に就て

著者: 市河三太

ページ範囲:P.275 - P.278

 滑平筋はGrundfest7)の云ふ樣に1),筋纖維が極端に小さい事,2),神經支配が不明瞭である事,3),藥物其他の刺激に對する感受性が高い事,4),筋に自働性收縮が屡々見られる事等から骨骼筋に較べるとその性質が複雑である。その爲一般に定量的な電氣生理學的研究が比較的少く活動電流に就ても骨骼筋と較べると研究が餘り爲されていない。特に膀胱の活動電流に就ては僅かにRosenlueth15)や高木18)等の研究を見るに止る。そこで私はヒキガエル(Bufo vulgaris)の膀胱を用いその自働性收縮に伴つて現われる活動電流を誘導し,多少の知見を得たので報告したい。

日本産しびれえい(Narke Japonica)の放電について

著者: 杉靖三郞 ,   田中英彦 ,   深山幹夫

ページ範囲:P.278 - P.280

 電氣魚の放電については,生體の發電現象のうち,特殊なものとして古くから幾多の學者により,貴重な研究がなされている。
 日本産のしびれえいについては1914年に藤1)が體外にとり出した電氣器官について,その放電の時間的經過を電磁オツシログラフを使用して描記し,精細な業蹟を殘している。その後この方面の研究は,最近まで殆ど行われていない状態である。筆者等は1940年10月以來,三崎の臨海實驗所において,同地の近海で得たしびれえいNarke japonicaを材料として,その正常状態に於ける放電經過,および摘出した電氣器官の人工的刺激による放電經過につき若干の知見を得ているので,ここにその概略を述べる。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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