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文献詳細

雑誌文献

生体の科学30巻2号

1979年04月発行

文献概要

特集 神経伝達物質の同定 総説

ペプチドの作用—神経伝達物質としての可能性

著者: 小西史朗1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部薬理学教室

ページ範囲:P.73 - P.81

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 はじめに
 脳の神経細胞がペプチドを"化学的メッセンジャー"として分泌しているという考えが初めて提出されたのは1950年代のはじめであるが1),この考えが飛躍的に進展しはじめたのは1970年以降である。視床下部の神経分泌細胞(neurosecretory cell)がいくつかのペプチドを放出し脳下垂体からのホルモン分泌を調節していることはすでに確立した概念である2,3)。これらのホルモン分泌調節ペプチド(releasing hormone)を含めて,10種類以上の生理的に活性なペプチドが脳内に存在することが明らかにされている(総説4)を参照)。
 これらのペプチドはいずれも脳内に選択的に分布していることから,特定の機能に関与していることが予想されている。その機能として現在のところ,ホルモン,神経伝達物質および調節因子(modulator)の三つが考えられている。しかし,ホルモンとして確定しているものを除いて脳内における実際の役割を同定するための証拠は十分とはいえない。一方,ホルモンと伝達物質の区別は放出部位から標的部位までの距離の差という点で明らかに区別されると考えられていたが,最近以下に示すような事実が明らかにされてきたので,ホルモンと伝達物質を明確に区別することはそれほど容易ではなくなっているように思われる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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