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文献詳細

雑誌文献

生体の科学30巻2号

1979年04月発行

文献概要

解説 大脳皮質視覚領におけるシナプス可塑性

第1部 その出発と最近の話題

著者: 笠松卓爾1

所属機関: 1カリフォルニア工科大学生物学部

ページ範囲:P.102 - P.110

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 はじめに
 神経生物学の各分野で,個体発育の初期にシナプスがある種の可塑性を示すことはよく知られている。カエル・イモリあるいはネズミの神経筋接合部17,60,82)が好んで研究材料とされている。動物の行動上にみられる可塑性の例としては,孵化10数時間以内のアヒルやヒヨコにみられるLorenzの「刷込み(imprinting)7,40)」や,歌をうたう小鳥における「種固有の歌の学習59)」をあげることができる。このほか,コオロギ腰部神経節にある巨大介在細胞の反応に対する音刺激閾値が,孵化後に与えられる自然刺激(音体験)の有無によって決定されることも知られている68,72)
 他方,決して「より単純な系」とはいえないにもかかわらず,幼若哺乳動物ことにネコやサルの大脳視皮質もまた一つの特異な研究対象(animal model)として,過去20年に亘って取り上げられてきた。それは,ネコやサルに基づく成績が,直ちに人間の問題に結びつけられるからである。たとえば,Julesz55)によれば,人口の約4%(米国)は立体視が完全でない,といわれている。斜視の乳幼児を対象とした心理物理学的研究によれば,人間における両眼視の臨界期(critical period)は,ネコ・サルのそれよりも長く,3歳頃まで続くと計算されている4,44)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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