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プレッシャーによるHRPの単一細胞内注入法:無麻酔動物の皮質ニューロンへの応用とバイオプシー
著者: 酒井正樹1 酒井廣子2
所属機関: 1京都大学霊長類研究所神経生理部門 2
ページ範囲:P.212 - P.217
文献購入ページに移動綿胞内への物質注入による単一神経細胞のマーキングは1968年頃よりKravitz17)らによりProcion dyeを用いて盛んに行われだした。horseradish peroxidase(HRP)による細胞内マーキングは1975年にMullerら10)がヒルのganglion cellで初めて試み,同時に,同定した細胞の電子顕微鏡による観察をも行っている。これはLa VailらがHRPをその軸索内逆行輸送に目をつけ中枢神経系に適用して3年後のことである。翌年,Snowら16),Jankowskaら3),Cullheimら2),Lightら7)がネコの脊髄運動ニューロンを,Kitaiらのグループが尾状核ニューロン5)と小脳のPurkinje cell8)に,適用して成果を収めた。以後HRPによる細胞内マーキングはしだいにポピュラーになりつつある。
ところで,微少電極からの細胞内への物質注入はこれまでのほとんどが,電気泳動に頼ってきた。しかしこの方法では大量の通電が細胞活動の連続的モニターを妨げる他,細胞の保持を困難にする。しかも十分量の注入には時には数十分を要するので現在のところ無麻酔動物には応用されていない。筆者らはこの欠点を克服すべくプレッシャーによるHRPの細胞内注入を試み,慢性無麻酔ネコの大脳皮質ニューロンを短時間でマーキングすることに成功した。
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