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文献詳細

雑誌文献

生体の科学30巻4号

1979年08月発行

文献概要

特集 輸送系の調節 総説

海水魚の腸管の水・電解質輸送

著者: 安藤正昭1 平野哲也2

所属機関: 1広島大学総合科学部 2東京大学海洋研究所

ページ範囲:P.258 - P.265

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 はじめに
 生命の起源は海であるとされている。事実,下等無脊椎動物の多くは,海産であり,彼らの体液のイオン組成および浸透圧は,海水とほぼ等しい。これに反し,動物界で最も進化しているとされている脊椎動物は,海水・淡水あるいは陸上といった環境に広く分布しており,その体液のイオン濃度は,円口類のメクラウナギ類の体液が海水とほぼ等しいことを除けば,下等,高等あるいは生息環境の如何に拘らず,すべて海水の約1/3に保たれている。これは脊椎動物が進化の過程で海から汽水さらには淡水に進出したことを示すものと考えられている。
 水生の脊椎動物である硬骨魚類には淡水産と海産のものがある。淡水魚の体液の浸透圧は約300mOsmで,周囲の淡水(0.1〜1.0mOsm)より高いので,水は絶えず体内に浸入し,イオンは流出する。そのため淡水魚は,ほとんど水をのまない。他方,海産魚の体液は,350〜400mOsmと淡水魚のそれと大差ないが,外界である海水の浸透圧(1,000〜1,100mOsm)よりはるかに低く,彼らは絶えず脱水の危険にさらされている。この脱水による水不足を補うために,海水魚は多量の海水をのみ,水を1価イオン(Na,Cl)と共に腸から吸収している。また腸および体表より濃度差により体内に入った過剰の1価イオンはえらから能動的に排出され,体液の恒常性が維持されている1〜6)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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