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文献詳細

雑誌文献

生体の科学30巻4号

1979年08月発行

文献概要

解説

好塩菌の紫膜とバクテリオロドプシン

著者: 徳永史生1 吉澤透2

所属機関: 1東北大学理学部物理学教室 2京都大学理学部生物物理学教室

ページ範囲:P.266 - P.275

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 Salt Lakeのように非常に塩濃度の高い所には,高度好塩菌(Halobacterium)と呼ばれるバクテリアが生育している。このバクテリアの細胞膜には紫色をした構造体がある。この構造体は紫膜と呼ばれている。紫色の本体はレチナール(ビタミンAアルデヒド)を発色団とする膜タンパク質である。1971年OesterheltとStoeckenius1)が,このカロチノイドタンパク質にバクテリオロドプシンという名称を与えて以来,紫膜は非常に活発に研究されてきた。
 その理由の一つは,ロドプシンがバクテリアにも存在するという耳よりな話であったからである。動物のロドプシンは眼の網膜の中にあり,視覚の光受容物質である。とくにその光反応機作の研究は,生体高分子反応の中でも最も魅力的な研究課題の一つと考えられている。加えるに,ロドプシンの存在している膜は,それが存在するがゆえに,生体膜の中でも最もよく研究されてきた。したがって,生体高分子や膜の物性に興味をもつ物理学者や化学者にとって,それらはきわめて魅力的な研究材料である。しかしながら,その研究材料を調製するには,彼らの苦手とする血なまぐさい作業を,しかも暗室の中で行わねばならず,この障害を乗り越えて初めて動物の眼から,ロドプシンやそれを含む膜を取り出すことができるのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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