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文献詳細

雑誌文献

生体の科学30巻4号

1979年08月発行

文献概要

実験講座

ホヤ未受精卵における定常電流雑音

著者: 大森治紀1

所属機関: 1東京大学医学部脳研究施設生理学部門

ページ範囲:P.276 - P.282

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 はじめに
 生体における情報の伝達および処理は,活動電位と呼ばれる膜電位の変化を用いて,神経細胞において行われている。1952年にHodgkin, Huxleyら1)により神経細胞膜興奮の理論が発表されて以来,四半世紀にわたる研究の結果,活動電位は細胞膜に組み込まれた数種類のイオン透過性チャンネルの存在,および個々のイオン透過性チャンネルの性質の違いにより発生することが知られてきた。現在,Na, Ca, Kチャンネルなどが電気生理学的に調べられている2)。こうしたイオン透過性チャンネルの細胞膜表面での存在密度,あるいは個々のチャンネルでのイオン透過の能力などに関する微視的な知見は,神経細胞膜を含めた興奮性膜の機能を理解するうえで重要であろう。
 横紋筋膜3)などですでに観察されている内向きK電流(異常整流電流)は,内向き方向の電流に対しては,高いコンダクタンスを示すが,外向き方向の電流はほとんど流れない特殊な整流機能をもったKイオン透過性チャンネル(異常整流機構,anomalous rectifier)を通る電流である。さらに,ヒトデ卵細胞4),カエル横紋筋5)などを用いた実験により,この内向きK電流は,膜電位の過分極パルスに応じて増加し,続いて減少する過渡的な成分と,最終的にその膜電位により決まる定常電流値とを示すことがわかっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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