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文献詳細

雑誌文献

生体の科学30巻5号

1979年10月発行

文献概要

特集 In vitro運動系 総説

染色体移動

著者: 酒井彦一1

所属機関: 1東京大学理学部生物化学教室

ページ範囲:P.355 - P.359

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 はじめに
 有糸分裂でみられる娘染色体の両極への移動は,細胞周期の間に起る変化の中で肉眼でみることのできる大変動的な現象である。その運動を支える紡錘体は,卵細胞では周期的に形成され,また消失する。細胞は染色体輸送のために一時的に紡錘体を作り,用が済めば消してしまうという意味で,染色体運動には通常の,みかけ上安定な構造をもった運動系にはみられない特徴がある。そこで,その運動系の一時的構築がどうして起るのか,どのような運動系が関与するのか,その分子的機構は何か,という問題が興味の対象となっている。しかし,過去二十数年間に,紡錘体または分裂装置を単離する多くの試みがなされてきたにも拘らず,その構造的な不安定さのために分離には一種の固定操作が必要とされ,染色体運動をIn vitroで起し得る紡錘体の単離はできなかった1)
 1959年に,井上2)の偏光顕微鏡による解析から,紡錘体の微細線維の配向が温度に依存した動的平衡にあることが分っていた。その後,紡錘体の機能や娘染色体の後期運動(anaphase movement)と,動原体や染色体糸などとの関連を明らかにしようとして,紡錘体上の局所的な紫外線照射実験が行われた3)。また,1958年以降,電顕観察によって染色体糸が動原体から極に向ってのびている20〜30本の微小管束であることがわかり,染色体運動の原動力はこの微小管束を通して動原体に及んでいると考えられるようになった。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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