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解説
文献概要
Ⅰ.一般生物界と臭素
自然界における臭素の分布は広汎で地球上のあらゆる地域に存在し,ほとんどすべての動植体の成分中に見出される。生物界における臭素の化学的存在形は大部分は無機塩類の形で存在するらしいけれど,事実は詳しく調べられたことがないのである。高等動物にあってはハロゲン元素の中で,ヨウ素は甲状腺ホルモンとして,フッ素は歯の関係として,塩素はNaClとしてそれぞれ生体にとっての須要さが知られているが,臭素だけは生体とのかかわりについて全く不明のままである。ヨウ素のように地域的欠乏状態も起らないし,実験的に臭素欠乏状態を現出するには分布が広汎すぎて不可能に近い。だからといって生体内で須要でないとはいえないところである。
生物界における臭素が有機物として存在することが明らかになっているのは,わずかに海産の下等動物からdibromotyrosineが分離されたことがあるだけだが,最近になって海藻から分離されたlaurencin1),微生物のある種のものが生産するXanthomonas pigments2)がそれぞれ臭素を含む有機物であることが知られるに至ったが,以上が生物界における有機臭素化合物のすべてであった。
自然界における臭素の分布は広汎で地球上のあらゆる地域に存在し,ほとんどすべての動植体の成分中に見出される。生物界における臭素の化学的存在形は大部分は無機塩類の形で存在するらしいけれど,事実は詳しく調べられたことがないのである。高等動物にあってはハロゲン元素の中で,ヨウ素は甲状腺ホルモンとして,フッ素は歯の関係として,塩素はNaClとしてそれぞれ生体にとっての須要さが知られているが,臭素だけは生体とのかかわりについて全く不明のままである。ヨウ素のように地域的欠乏状態も起らないし,実験的に臭素欠乏状態を現出するには分布が広汎すぎて不可能に近い。だからといって生体内で須要でないとはいえないところである。
生物界における臭素が有機物として存在することが明らかになっているのは,わずかに海産の下等動物からdibromotyrosineが分離されたことがあるだけだが,最近になって海藻から分離されたlaurencin1),微生物のある種のものが生産するXanthomonas pigments2)がそれぞれ臭素を含む有機物であることが知られるに至ったが,以上が生物界における有機臭素化合物のすべてであった。
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