icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学31巻3号

1980年06月発行

文献概要

特集 赤血球膜の分子構築 総説

赤血球膜糖タンパクの構造と機能

著者: 中島元夫1 辻勉1 大沢利昭1

所属機関: 1東京大学薬学部生体異物免疫化学教室

ページ範囲:P.211 - P.221

文献購入ページに移動
 はじめに
 多細胞における種々の細胞間相互作用の機構とその意義を解明しようとする細胞社会学的研究は,細胞表面の分子性状の解明を必要不可欠とする。そこで,細胞膜構築とその構成成分の化学組成の研究が盛んに行われている。特に細胞膜系の糖タンパクは,いずれも細胞表面に露出して存在しており,細胞表面特異性や,細胞と細胞,細胞と外環境因子の相互作用における役割が注目され,その生化学的研究の進展にはめざましいものがある。しかし,細胞周期をもち,様々な細胞活動を行っている細胞の膜糖タンパクは一定の標品の調製が困難で,構造解析に供し難い。そのため多年にわたり,タンパクの代謝生合成を行わず,多量に均一の膜標品が得られる赤血球の膜が細胞膜モデルとして取り扱われ,その糖タンパクが詳細に解析されるに至った。
 赤血球膜は,還元剤のβ-メルカプトエタノール存在下でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動1)にかけると,10数本の主要なタンパクのバンドが観察される2)。これらのうち,クマシーブルーで染色されるband 3と呼ばれるものと,過ヨウ素酸酸化シッフ試薬(PAS)染色陽性のPAS-1,2,3,4などが糖タンパクである。これらは膜内在性で,膜を貫通して存在する2〜6)ことから赤血球膜における機能が注目され,また臨床的にも興味ある抗原性を有することから,その精製と構造解析が最も精力的に進められている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?