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文献詳細

雑誌文献

生体の科学31巻3号

1980年06月発行

文献概要

解説

赤血球の加齢と膜の変化

著者: 沢崎嘉男1 岩岡英男1

所属機関: 1東京医科歯科大学難治疾患研究所遣伝生化学部門

ページ範囲:P.230 - P.238

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 はじめに
 赤血球は種により,定められた一定の寿命の後に血中から消失するが,その寿命を決定する因子も,老化赤血球の処理の場についても,不明のまま残されている。一般的には,処理の場は脾臓をはじめとする網内系とされているが,なるほど病的ないし障害赤血球は脾臓に分布するものの,生理的な老化赤血球も同様に処理されるという確証はなかった1)。われわれは,ヘモグロビン代謝の生理的な場を知るために老化赤血球の運命について検討を始めたのであるが,これは,その昔,象牙商人が暗黒大陸で象の墓場を捜し求めてさまよったことに似ている。実際には象の墓場はなかったのだが,赤血球ではどうであろうか。
 また,赤血球寿命の決定因子ないしは老化赤血球を処理する側の認識機構に関しても,さまざまな推測がなされているが,そのいずれも,生体内での証明に欠ける。もし,老化赤血球に対する何らかの認識機構が存在するならば,それは赤血球膜の老化に伴う変化をとらえていることが予想される。そのような推測の一つとして,最近,赤血球膜のシアル酸の減少が老化の信号となり,それを食細胞が認識して処理を行うとする考えが提出された2,3)。これは,血清脱シアロ糖タンパクが,肝実質細胞に選択的にとりこまれる所見3)から派生したもので,赤血球の膜タンパクのレベルで,老化とそれに対する認識機構をともに説明しうる,魅力的な仮説である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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