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実験講座
動物タンパク質の無細胞合成系
著者: 森正敬1 三浦恵1
所属機関: 1千葉大学医学部生化学第2教室
ページ範囲:P.343 - P.350
文献購入ページに移動 mRNAを加えてタンパク質を合成する無細胞タンパク合成系(cell-free or in vitro proreir synthesis)は最初はタンパク合成の分子機構を研究する目的で開発された。しかし最近では,特定のタンパク質のmRNA準位の測定やmRNAの精製に不可欠の方法となっている。さらに,タンパク質の細胞外分泌機構や細胞内における局在化機構の解析に威力を発揮している。筆者らは尿素排出型動物の肝ミトコンドリアに局在する2つの尿素サイクル酵素──カルバミルリン酸合成酵素I(CPS,EC 6.3.4.16)とオルニチントランスカルバミラーゼ(OTCEC 2.1.3.3)──のミトコンドリア局在化機構を解明する手段として無細胞タンパク合成系を用いている1,2)。CPS(サブユニット分子量160,000)2a)とOTC(36,000)2b)は共に肝ミトコンドリアのマトリックスに局在するが,その情報は核DNAにコードされ,細胞質リボソーム系で合成された後ミトコンドリア膜を通過してミトコンドリア内部へ輸送されねばならない。CPSとOTCのmRNAを無細胞タンパク合成系で翻訳させたところ,両酵素共にmatureサブユニットより分子量の少し大きい前駆体の形で合成されることをつきとめた1,2)。現在,前駆体のプロセシングとミトコンドリア膜輸送機構の研究を進めている。
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