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文献詳細

雑誌文献

生体の科学31巻5号

1980年10月発行

文献概要

特集 カルシウムイオン受容タンパク 総説

カルモデュリンの生化学

著者: 垣内史朗1 祖父江憲治1

所属機関: 1大阪大学医学部高次神経研究施設

ページ範囲:P.367 - P.379

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 カルモデュリン(calmodulin)は,分子進化の上からみて,トロポニンC姉妹蛋白の1つとしての位置を占める。しかし,筋収縮の調節蛋白としてのトロポニンが,専ら骨格筋と心筋にのみ見出されるのに対して,カルモデュリンの分布は,表1のごとくに,調べられた限りのすべての哺乳類組織に及び,この他,多くの非脊椎動物,テトラヒメナ等の原生動物,更に広く植物界にも見出されている。すなわちカルモデュリンの生物学的意義は,これらの組織における細胞内Ca2+受容蛋白としてのものに他ならない。
 カルモデュリンの歴史は,Ca2+-activatable phosphodiesteraseの歴史にはじまる。すなわち,1970年に私たちは,ラット脳ホモジェネートの遠心沈殿上清中に上記の酵素を発見して報告した1,2)。すぐに引続いて,同じく脳の抽出液中に,Ca2+によるこの酵素の活性化に必要な因子を発見した2,3)。一方同じ年に,USAのCheung4)は,脳ホスポジエステラーゼの活性化因子について報告した。奇妙なことに,彼は最初カルモデュリンをCa2+とは関係なく考えており†,Ca2+はむしろホスポジエスラーゼの阻害因子だと発表した5)。そのようなわけで,両グループの蛋白が同一のものであることを確認するまでに,更に数年を必要としたのである。すなわち,1973年に,カナダのWangら6)によってそれがなされた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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