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文献詳細

雑誌文献

生体の科学31巻5号

1980年10月発行

文献概要

解説

外分泌腺房細胞の電気生理—ラット,マウスの膵臓,唾液腺,涙腺を中心として

著者: 岩月矩之1 西山明徳2

所属機関: 1東北大学医学部応用生理学教室 2山形大学医学部第2生理学教室

ページ範囲:P.410 - P.421

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 微小ガラス電極を使用して,細胞内電位を報告したLundberg1)の仕事が,分泌細胞における電気生理学的研究の始まりである。彼はネコの顎下腺支配神経を電気的に刺激して一過性の膜過分極反応をみた2)。膵腺房細胞および涙腺の細胞内電位測定は比較的歴史が浅く,1968年,DeanとMatthewsは,コリン作動性神経末端から遊離されるアセチールコリン(ACh)が,膵腺房細胞を脱分極することを報告した3)。同年,HisadaとBotelhoは,ネコの涙腺で,支配神経を電気的に刺激して,二相性の膜電位変化を記録し,同時に測定した涙液分泌量の関連を報告した4)。近年,分泌機序に関する研究の発展はめざましいが,分泌刺激が最終的に酵素分泌やイオン液分泌に至る一連の過程,つまり刺激分泌連関(stimulus-secretion coupling)の解析に,細胞内電極をもちいた電気生理学的研究が果たした役割は極めて大きい5,6)。本稿では,唾液腺,膵外分泌腺および涙腺の腺房細胞の電気生理に焦点をしぼり,最近の研究の動向を解説したい。
 本題を論ずる前に電気生理学的方法の利点とその限界について論じてみたい。細胞内電極をもちいた電気生理学的方法の最大の利点は,述べるまでもなく,時間的経過の速いイオンフラックスの動態を忠実に捉えることができる点である。第2に,数本の微小電極を細胞に刺入して,隣接細胞間の機能的結合状況を知ることができる点である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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