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特集 細胞骨格 総説
細胞骨格としての微小管
著者: 佐藤英美1
所属機関: 1名古屋大学理学部附属臨海実験所
ページ範囲:P.2 - P.11
文献購入ページに移動 生体膜で囲まれた原形質は,"蛋白質繊維の骨組で整型されその間に各種の細胞器官がつまっている親水性ゲル"と考えられるが,この骨組を一般に細胞骨格(cytoskeleton)と呼ぶ。そして,機能との対応から細胞の"かたち"を規正する骨組の柔構造は,収縮性蛋白質によって構築される場合が多い。すなわちアクトミオシン系,10nm微細繊維系,またチュブリン・ダイニン系などであって,広く共通の素材として使われている。これらの収縮性蛋白質の特徴は,単独に,あるいは特定の修飾蛋白質と協同して,整然とした分子配向パターンをもつ微細繊維または微小管となり,ベクトル量として表現される定方向性細胞運動を支配することであろう。
細胞骨格構築制御の分子機構は,微細構造の重合・脱重合反応を制御するイオン強度の調節系,ATP分解酵素として機能するミオシンやダイニンなどの修飾蛋白質と切離しては論じられない。また,細胞骨格の生理機能は,本書の各章に述べられている生体膜の裏打ち蛋白質や,artifactであるかもしれないmicrotrabeculaeのとじめ構造等と考え合せ,総合的な把握を試みなければならぬ課題であろう。しかし,私達が現在持ちあわせている技法の限界と,生きている細胞に実在するであろう繊維構造の生理機能を直接さぐる作業の難しさから,このテーマは今後の新しい研究方法の展開に待つほかはない。
細胞骨格構築制御の分子機構は,微細構造の重合・脱重合反応を制御するイオン強度の調節系,ATP分解酵素として機能するミオシンやダイニンなどの修飾蛋白質と切離しては論じられない。また,細胞骨格の生理機能は,本書の各章に述べられている生体膜の裏打ち蛋白質や,artifactであるかもしれないmicrotrabeculaeのとじめ構造等と考え合せ,総合的な把握を試みなければならぬ課題であろう。しかし,私達が現在持ちあわせている技法の限界と,生きている細胞に実在するであろう繊維構造の生理機能を直接さぐる作業の難しさから,このテーマは今後の新しい研究方法の展開に待つほかはない。
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