icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻1号

1981年02月発行

文献概要

解説

Na+,K+-ATPase(Na+ポンプ)へのリガンド結合の熱力学的パラメータ

著者: 谷口和弥1

所属機関: 1北海道大学歯学部薬理学教室

ページ範囲:P.42 - P.50

文献購入ページに移動
 Na+,K+-ATPaseがATPの加水分解と共役して,Na+とK+を濃度勾配にさからって輸送することは広く認められている1〜3)。ここ数年の間にNa+,K+-ATP-aseが種々の動物組織1〜5)から比較的多量に安定な状態で精製できる方法が見い出されてきた。得られた標品は分子量約10万と5万の共に糖を含むペプチド6)と,リン脂質からなり,触媒活性は10万のユニットにあることが明らかにされている。また非常に不安定であるが高い活性をもつ標品には5万のユニットが検出されないとする報告もある7)。精製酵素標品とアゾレクチンまたは合成リン脂質から形成された小胞が8,9)赤血球で観察されると同様に,1分子のATPの加水分解と共役して,3分子のNa+と2分子のK+を濃度勾配にさからって輸送することが明らかにされている8〜10)。これはいうまでもなく,Na+,K+-ATPaseがNa+とK+の膜を通しての能動輸送を行う本体であることを示している。ATPの加水分解が,いかなる機構でNa+とK+の輸送をもたらしているかに関しては,リン酸化中間体(EP)の形成および分解の速度論的研究が精力的に行われた結果,かなり明確になってきた1〜3,11〜22)。しかし,EPのエネルギーレベルの推定,また酵素とリガンドの結合の熱力学的性質に関する研究は,ここ数年前に始められたばかりである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら