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文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻2号

1981年04月発行

文献概要

特集 チャネルの概念と実体 総説

サソリ毒とNaチャンネル

著者: 岡本治正1

所属機関: 1群馬大学医学部行動医学研究施設行動生理学部門

ページ範囲:P.121 - P.127

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 チャンネル説1,2),即ち興奮膜には各種イオンを特異的に透過させる透過路(イオンチャンネル)が存在し,活動電位の発生に与る,という考えは現在広く受け入れられている。このチャンネル概念の形成にあたり1つの有力な証拠を提供したのが,特異的作用物質の存在である。神経毒として知られる薬物の中でいくつかは,膜電位固定下に重複して観察されるイオン電流のうちある成分のみを特異的に抑制する。例えばテトロドトキシン,サキシトキシンはNa電流を抑制してK,その他のイオン電流には何の作用も及ぼさない。一方,テトラエチルアンモニウム,或いはその誘導体は,K電流のみを抑制する。しかもdose-responseの関係を定量的に調べてみるとこれら薬物に対し,それぞれ限られた数の受容体が膜内に存在する事が強く示唆される。こうしてそれぞれの薬物が,個別、特異的に結合する膜内分子としてイオンチャンネルの存在が浮かび上がってきたわけである。本稿の主題であるサソリ毒も又このようなイオンチャンネルに対し特異的な作用を及ぼす物質である事が近年明らかとなってきた。
 ところで,これら特異的作用物質は単にイオンチャンネル概念の成立に寄与したばかりでなく,その実体を探るプローブとしても活用されはじめている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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