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人類の染色体研究—主として古典について(上)
著者: 牧野佐二郎1
所属機関: 1北海道大学理学部染色体研究施設
ページ範囲:P.171 - P.176
文献購入ページに移動 動物における染色体の研究は19世紀の末葉から遺伝学と提携して発達した。遺伝子のにない手である染色体の研究は,遺伝現象,もっと広くいえば生命現象の基本的知識の探求につながる,生物学,医学の基礎である。動植物の染色体研究は品種の改良など応用場面に関係がある一方,根本的には遺伝の原理を究明,遣伝現象の解明に貢献し,更にそれは人類福祉の増進につながる。歴史的には80年になんなんとする歳月を経た現在,なおたくさんの学者によって研究が行われているのは人類の知識と福祉の増進へのひたむきな情熱にほかならない。現在,人類の染色体の知識は医学と生物学の結び手の役を果たす基礎学として重要性をもつに至り,その意義は大きい。
人類染色体の研究発達史をたどると,先ずつきあたるのは1880年前後から始まった主として性腺組織を研究材料とした固定切片法による古典的研究である。植物とは異なる生育条件,生態環境にある動物の組織を材料とする所に,そこに自らハンディキャップがある。古典法による染色体の研究は形態学の一分野に足踏みをつづける状態にあり,染色体の知識を遺伝現象に直接、間接に結びつける域にはほど遠い状態にとどまっていた。特に哺乳動物の染色体研究は遅々として進まず,数や形態をしらべるに汲々として,しかもそれさえ満足な成果を挙げるに至らなかった。
人類染色体の研究発達史をたどると,先ずつきあたるのは1880年前後から始まった主として性腺組織を研究材料とした固定切片法による古典的研究である。植物とは異なる生育条件,生態環境にある動物の組織を材料とする所に,そこに自らハンディキャップがある。古典法による染色体の研究は形態学の一分野に足踏みをつづける状態にあり,染色体の知識を遺伝現象に直接、間接に結びつける域にはほど遠い状態にとどまっていた。特に哺乳動物の染色体研究は遅々として進まず,数や形態をしらべるに汲々として,しかもそれさえ満足な成果を挙げるに至らなかった。
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