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肺表面活性物質
著者: 澤田英夫1
所属機関: 1静岡県立中央病院内科
ページ範囲:P.234 - P.241
文献購入ページに移動 肺胞を形成する肺胞上皮の表面は組織液でぬれているため気道内空気との間に広大な気・液界面を形成し,この気・液界面に一種の界面活性物質が吸着して界面活性膜を形成し,種々の界面活性能が発揮されているものと考えられている。肺の気・液界面に働く表面張力にはじめて注目したのはK.von Neergaard(1929)で,肺を空気でふくらますほうが生食水のような液体でふくらますより,より大きな圧を要すること,さらに含気肺胞表面の表面張力が通常の組織液のそれ(ほぼ30dynes/cm)よりもはるかに低く未知の界面活性物質の存在することを予言した1)。後年Macklin(1943)2)およびPattle(1955)3)がこの問題に注目し,気道内より界面活性物質をとり出したこと,Clementsがこの物質を用いてin vitroで記録した表面張力・表面積曲線から肺の圧・量曲線に及ぼす肺表面活性膜の効果をきわめて明解に示したことにより肺表面活性物質の存在意義が確立されたと言えよう4)。
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