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文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻4号

1981年08月発行

文献概要

特集 膜の転送 総説

食機能における膜タンパクの変動—マクロファージ細胞膜を中心として

著者: 富田光子1 中尾真2

所属機関: 1埼玉医科大学生化学教室 2東京医科歯科大学医学部第1生化学教室

ページ範囲:P.317 - P.324

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 ファゴシトーシス(貪食能)やピノシトーシス(飲食能)等の食機能は19世紀未に細胞学者によって原生動物と白血球から発見された。今日では細胞膜のエンドシトーシス(膜の内包化現象)として,下等動物から高等動物の体細胞に至るまであらゆる細胞に広く見い出され,細胞の生命を維持するために外界からの栄養素の補給,および微生物,変性細胞等の異物のとりこみと処理を行うなど,生体や細胞にとって重要な生理機能の1つである1〜3)。さらに細胞性免疫成立の(おそらく引き金となる)機構の研究や感染予防などに役立てるためにも,この膜の転送現象をぬきにして解明することはできないであろう4)
 マクロファージ(Mφ)は無脊椎動物,脊椎動物を問わずあらゆる動物に存在し,多核白血球と並びともに"professional phagocyte"ともよばれるように,旺盛な貪食能をもつことが知られている。多核白血球は遊走性もより高く,専ら食べることに専念して早く死んでゆき,どちらかといえば原始的な性質が強い。それに対してMφは単に食機能が盛んであるだけでなく,免疫にも関係し,タンパクやおそらく糖鎖の合成を行って長期間生きており,ある種の条件下で分裂する。したがって細胞の代謝回転をはじめ,より高度に分化した機能を長期間にわたってしらべようとするときは,Mφの方がよい材料であろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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