icon fsr

文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻4号

1981年08月発行

文献概要

特集 膜の転送 総説

膜の再循環—シナプス機能を中心として

著者: 門田健1 門田朋子2

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所神経化学 2千葉大学医学部解剖学教室

ページ範囲:P.325 - P.335

文献購入ページに移動
 周知のように,多くの化学シナプスでは,その刺激伝達物質の放出は量子的様式で行われている。すなわち放出される刺激伝達物質の量は不連続量であって,ある一定基本量(1量子)の整数倍の量であるような様式である7,26,31)。本稿では刺激伝達物質としてアセチルコリン(ACh)をとりあげる。AChの量子的放出の機構については2つの考え方がある。1つは「小胞仮説(vesicle hypothesis)」であり8,20,26,43,53),もう1つは「水門説(gate hypothesis)」である2,8,11,26,39,46)。これらについて簡単に説明を加える。
 小胞仮説は,シナプス小胞こそAChの量子的放出の形態的基礎であると考えている。図1aに見るように,シナプス前終末には特徴的に,多数のほぼ均一な径(50nm)をもったシナプス小胞が存在している。このシナプス小胞1個が1量子分のACh分子(数千〜数万個)を含むと考えるわけである。こう考えれば,予め合成・貯蔵されているAChの量子化が説明し易い。また刺激に応じて各量子が相互独立的に放出されること,そしてまたある瞬間のACh放出量が量子的整数倍になることも説明し易くなる8,20,43)。見方によれば,小胞仮説とはシナプス前からの電気的にコントロールされ,量子的に規格化されたAChの外分泌を考えるものともいえる。小胞仮説が成立するためには次の条件が充たされる必要がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?