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文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻4号

1981年08月発行

文献概要

特集 膜の転送 総説

神経軸索における膜の輸送

著者: 月田承一郎1 石川春律1

所属機関: 1東京大学医学部解剖学教室

ページ範囲:P.336 - P.343

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 典型的な外分泌蛋白質である膵臓の消化酵素が,粗面小胞体で合成され,Golgi装置で修飾・濃縮された後,分泌顆粒を経て細胞外へ放出されるというモデルを提出したのは,Palade らである。このモデルによると,消化酵素を包む膜自体も,粗面小胞体で形成され,酵素とともに形質膜まで運ばれることになる。ノーベル賞受賞講演をまとめた1975年のPaladeの総説1)には,その時点における膜輸送に関する問題点が明確に示されている。約10年を経た現在,このモデルの普遍性は確固たるものとなってきたが.反面,数々の新しい問題点が提起されつつある,さらに,細胞内膜系の輸送の原動力や,その調節機構も興味ある問題であるが未だみるべき進展はない。
 筋細胞の収縮機構の研究が,非筋細胞の運動機構の理解に不可欠であるのと同じように.細胞内の膜輸送が特殊な形で発達している細胞の研究が,一般の細胞の膜輸送の理解に役立つことは言うまでもない。近年,このような観点から,神経軸索内の膜輸送が注目されている。ここでは,神経軸索内の膜輸送の研究の現状について述べ,神経軸索が,いかに膜輸送の研究に適した系であるかを示したい。なお,一般の細胞の膜輸送については,他に多くの総説があるので参照されたい2〜5)。また,神経細胞と呼ばれる細胞にも,多くの種類があり,混乱を招く可能性があるので,本稿では,特別に断らない限り,哺乳動物末梢神経の有髄軸索について述べることにする。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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