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人類の染色体研究—主として古典について(下)
著者: 牧野佐二郎1
所属機関: 1北海道大学理学部染色体研究施設
ページ範囲:P.354 - P.359
文献購入ページに移動 Ⅱ.新技術の開発と研究の展開
古典研究法から得られた研究結果からは遺伝現象と染色体の知識を結びつける手掛かりはとうてい求め得なかった。遺伝に関する基礎知識はどうしても顕微鏡下における染色体の研究と結びつけて求めなければならない。植物やショウジョウバエにおける細胞遺伝学の発達と知識の増進をながめながら,人類の染色体の知識の貧困にただ手をこまねいていたのではなかった。性腺一辺倒の材料から脱せんとする材料の選択と,それを使っての研究技術の改良に絶えず努力が続けられていたのである。固定切片法の下で限界に達していた哺乳動物の染色体研究法を打開しようとする.いくつかの試みが行われた。それは主に戦後1950年頃からアメリカの各地に集まった若い研究者の間に,またイギリスやフランスの各地の研究所にあった遺伝学者の間に,その方面の開拓が進められた。まず男性生殖細胞のみにたよる不利から脱するために最も心を労したのは材料の選択である。それと固定切片法に代わる技術の開発である。
まず技術の改良として‘押しつぶし法’(Squash method)の導入がある。これは植物の染色体研究にベリング(Belling, J. 1926)が醋酸・カーミンで材料をスライドの上で押しつぶす方法に始まり,1930年頃からショウジョウバエの唾腺染色体の研究に専ら活躍した(Painter 1933)。
古典研究法から得られた研究結果からは遺伝現象と染色体の知識を結びつける手掛かりはとうてい求め得なかった。遺伝に関する基礎知識はどうしても顕微鏡下における染色体の研究と結びつけて求めなければならない。植物やショウジョウバエにおける細胞遺伝学の発達と知識の増進をながめながら,人類の染色体の知識の貧困にただ手をこまねいていたのではなかった。性腺一辺倒の材料から脱せんとする材料の選択と,それを使っての研究技術の改良に絶えず努力が続けられていたのである。固定切片法の下で限界に達していた哺乳動物の染色体研究法を打開しようとする.いくつかの試みが行われた。それは主に戦後1950年頃からアメリカの各地に集まった若い研究者の間に,またイギリスやフランスの各地の研究所にあった遺伝学者の間に,その方面の開拓が進められた。まず男性生殖細胞のみにたよる不利から脱するために最も心を労したのは材料の選択である。それと固定切片法に代わる技術の開発である。
まず技術の改良として‘押しつぶし法’(Squash method)の導入がある。これは植物の染色体研究にベリング(Belling, J. 1926)が醋酸・カーミンで材料をスライドの上で押しつぶす方法に始まり,1930年頃からショウジョウバエの唾腺染色体の研究に専ら活躍した(Painter 1933)。
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