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実験講座
急速凍結・置換固定法
著者: 市川厚1 市川操1
所属機関: 1横浜市立大学医学部解剖学教室
ページ範囲:P.372 - P.377
文献購入ページに移動 最近,細胞や組織の微細構造を分析するための試料作製法として,急速凍結法とこれに関連する一連の試料処理法が注目を集めている。これは,生の試料をそのまま瞬時に凍結して,細胞や組織の構造と,そこに含まれる種々の物質を氷の中に封じ込んでしまい,なるべくこの状態を損わないような形で形態分析が可能なサンプルを作ろうとするもので,「細胞が生きている時の状態をそのまま保存し,分析する」という形態学の理想に近づくことができる極めて有力な手段であると考えられるからである。しかし,凍結技法の名で一括して呼ばれているこれらの技術の多くは,決して新しいものではない。前世紀末,すでにAltmann(1890)1)が化学固定法に代わって,凍結した試料を乾燥し,光学顕微鏡標本を作ることを試みているし,同様の試みはMann('02)10),Gersh('32)6),Sjöstrand('44)16)らの手によって今日一般に広く利用されている凍結乾燥法へと発展した。また,Simpson('41)14)は-40〜-80℃に保ったアセトンやアルコールなどの有機溶媒中で氷が溶けることに着目して,凍結試料の脱水処理を行うこと(凍結置換法)に成功し,この方法はさらにFederとSidman('58)4)によって凍結置換固定法へと発展した。
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