実験講座
単一クローン抗体のつくり方
著者:
真崎知生1
田中建志2
所属機関:
1筑波大学基礎医学系薬理学
2東京都臨床医学総合研究所
ページ範囲:P.430 - P.436
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予め特定の抗原で免疫したマウスから採取した抗体産生能力を持つ脾臓細胞と,際限なく増殖し続けるという腫瘍細胞の特性を持ったマウス由来のmyeloma細胞を融合させ,試験管内でそれぞれの特性を持ち合わせた新しい腫瘍細胞をつくることが出来る。さらにこれをクローン化するとただ1種の抗体しか産生しない雑種腫瘍細胞(hybridoma cell)が得られる。この方法は1975年にKöhlerとMilsteinによって発表された1)。それまでは抗原を注射した動物から得られる抗体はたとえ1つの抗原分子に対する抗体であってもきわめて多種類の抗体を産生するいわゆるポリクローン抗体であったため,最近の免疫学,生化学などの分野での抗体を用いる詳細な研究の場合には,この抗体の多様性がその応用の限界となっていた。これに対してこの新しい技術開発によってもたらされた単一クローンのhybridomaが産生する単一クローン抗体は唯1つの抗原決定基を認識し,しかも唯一種の抗体(1つの抗原決定基に対しても何種類かの抗体が産生され得る)であることが期待され,その上hybridomaを培養し続ける,あるいはマウスの腹腔内へ投与することによって永遠に同一の抗体を多量に得ることの出来る可能性があるため,抗体を応用して研究するものにとってはこれはこの上もない強力な武器となり得る。