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文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻5号

1981年10月発行

文献概要

講義

ヒト血小板の細胞運動

著者: 野尻修2 毛利秀雄2

所属機関: 1 2東京大学・教養・生物

ページ範囲:P.447 - P.452

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 チューブリンとダイニンの話題が続きましたが,私のお話しする系は,チューブリンの役割が比較的小さく,アクトミオシン系が関与しているものですから,そのつもりでお聞き願います。アクチン,ミオシンといえば,筋,粘菌,アメーバ,および動植物細胞における運動の基礎をなす高分子ですが,血小板は,多分この分野の研究対象としてもっとも新顔のモデル細胞系でしょう。血小板は,光学顕微鏡で観察するには小さすぎると思われていましたから,2〜3年前までは,誰も生きた血小板を念入りに調べようとは考えなかったからです。しかも今なお,生きた細胞の研究には,光学顕微鏡がほとんど唯一の手段なのです。電子顕微鏡による血小板の研究もなされてきましたが,誤謬をもたらした情報も少なからずありました。今私たちは,「血小板パズル」に,いくつかのまだ見つかっていない断片を付け加えようとしているところなのです。
 血小板について少し背景説明をしますと,血小板は,長骨の骨髄にある巨大核細胞の無核断片で,膨大な数が血液中を循環しており,人体生理上少なくとも3つの働きを持っています。第1は,血管系から血液が失われるのを防ぐ止血作用です。第2に,血栓形成に関与しています。これには,むろん,心臓発作の際の冠動脈血栓症や,ある種の卒中の他,外傷を受けた血管を塞ぐ血全形成も含まれます。第3は,血液凝固です。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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