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文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻6号

1981年12月発行

文献概要

特集 筋小胞体研究の進歩 総説

筋小胞体のイオン輸送

著者: 山本信行1 葛西道生1

所属機関: 1大阪大学基礎工学部生物工学科

ページ範囲:P.479 - P.486

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 筋小胞体は骨格筋の筋原線維を網目状に取り巻いている細胞内器官である。その主要な機能は,神経系からの電気的信号を,筋線維の収縮弛緩を直接制御するCa2+の信号に変える情報変換機能である1).そのために,筋小胞体は,Ca2+の能動的取り込み機構2),貯蔵機構3),遊離機構4)を備えており,神経系からの刺激に応答して筋細胞内のCa2+濃度を調節している5,6)。Ca2+の能動輸送と貯蔵機構については,分子レベルでの解明が非常によく進んでいる。
 最近,このようなCa2の輸送に関与する機構の他に,筋小胞体にはアニオン輸送体やカチオンチャネルなどの受動的イオン輸送システムが存在することが明らかになってきた。これらのイオンの受動的輸送システムの生理学的意義は不明であるが,Tシステムと筋小胞体の間の情報伝達機構とCa2+遊離機構についてまだよくわかっていないことなどを考えると,イオンの受動的輸送システムが電気的現象を介してこれらの機構と密接に関係している可能性は大きい。その意味で,これらのシステムの研究は生理学的にも生化学的にも重要である。本稿では,これらのイオンの受動的輸送システムに関する最近の知見を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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