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文献詳細

雑誌文献

生体の科学32巻6号

1981年12月発行

特集 筋小胞体研究の進歩

総説

筋小胞体のATPase反応とCa2+輸送の共役機構

著者: 山本泰望1

所属機関: 1大阪大学理学部生物学教室

ページ範囲:P.487 - P.494

文献概要

 筋肉から単離された筋小胞体(SR)がMg2+とATP の存在下で外液のCa2+を強く吸収することがHasselbachと牧之瀬1),および江橋とLipmann2)によって発見されてから今日に至る約20年間にSRのCa2+能動輸送の研究は長足の進歩を遂げ,Na+,K+輸送系とならんでその分子機構が最も明らかになった膜系として注目されている。SRが他の膜系と比べカチオン能動輸送を研究する上で多くの優れた利点を有することが発展の大きな理由となっている。すなわち①SRは筋肉から比較的簡単に調製出来る上,能動輸送の中心的役割を果すCa2+,Mg2+依存性ATPaseが膜蛋白の大部分を占め,他の酵素活性は無視出来る。②Ca2+輸送とATP分解反応の共役が堅く,広い条件で両者の化学量論比は2に保たれている。そのためCa2+輸送系は完全に可逆的で,Ca2+ポンプの逆流に伴ってADPとPiからATP が形成される。③基質,反応産物,およびカチオンが膜に作用する方向(側性)が明確に区別される。逆にこの区別は界面活性剤やイオノフォアを用いて酵素活性を失うことなく容易に取除くことが出来る。その他④外液のCa2+やMg2+濃度はEGTAやEDTAで正確に調節出来,また膜内部のCa2+濃度は蓚酸やPiで調節が可能である等,能動輸送の研究に欠くことの出来ない数多くの利点を兼ね備えている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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