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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻1号

1982年02月発行

文献概要

解説

中枢神経回路網の再構成

著者: 川口三郎1

所属機関: 1京都大学医学部脳神経研究施設生理学部門

ページ範囲:P.47 - P.57

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 脳を構成する神経回路網の可塑性は学習,記憶,代償機能といった脳の高次機能の成立基盤である。脳の高次機能をはじめて生理学の研究対象にしたと云われるPavlovは条件反射の脳内機序として当初からニューロン間の結線の可塑性を想定していた。かつて大脳皮質の機能はどこも等価であり全体として機能するという機能等価説,全体機能説が広く信じられていた。今日では大脳皮質の機能局在は疑いのない事実として認められているが,脳の部分的損傷によって障害された機能が時間の経過と共に回復する現象は機能局在説にとって説明し難いことであった。なぜなら神経病理学は既に損傷されたニューロンの再生が起こらないことを明らかにしていたからである。この困難に対して,Huhling Jacksonの階層構造説すなわち1つの機能が重層的に担われており上部の階層が破壊されても下部の階層が抑制から解放されて障害された機能を代償するとか,機能代替説すなわち障害された部位の機能を障害されなかった他の部位が肩代わりするとの説明が出された。後者の説明は皮質の各領野はそれぞれ特有の機能を発揮しながら潜在的には他の領野の機能を担う能力があると考えるものである。また別の説明としてはSperryによる行動代替説とか,Luriaらによる再訓練説が出されている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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