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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻2号

1982年04月発行

文献概要

特集 細胞の寿命と老化 総説

神経細胞の老化

著者: 飯塚礼二1

所属機関: 1順天堂大学医学部精神医学教室

ページ範囲:P.119 - P.125

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 神経細胞のひとつの特性として,周知の様に生後分裂を行なわないことが古くから知られている。そして複雑な細胞間の刺激伝達はsynapsという特殊な構造を介して行なわれる。しかも,細胞体にくらべて極めて大きな容積と延長を持つ各種の突起を持ち,その末端での物質代謝が円滑に行なわれるために必要なエネルギー生成や,活性物質の合成,輸送などの代謝機構の働きが活発であり,その源泉が専ら血液とグリアを介して間断なくとり入れられ続けられなければ機能を保てない。神経細胞が老化に陥る場合には,従って神経機能の出発点である細胞体と,現実に機能の統合が行なわれるために重要な,突起ないしsynapsの両者に一応区別して考えると整理し易い。この場合形態学的には後者をneuropilという表現で一括して細胞体から区別することが多い。
 古くから脳の老化過程との関連で注目されて来た臨床症状ないし疾患の代表的なものは老年痴呆(senile dementia)である。最近人口の高年齢化が問題となると共に,漸くわが国でも老年痴呆の疫学的研究が行なわれる様になった1〜3)。他方,老年痴呆とならんで古くから脳老化過程が早期かつ高度に出現する疾患とされていたAlzheimer病は,最近では神経病理学的所見については少なくとも質的な区別はし難いことから,臨床症状を示す年齢によってそれぞれ発病誘因因子が異なっている可能性があるにすぎないと考えられている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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