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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻3号

1982年06月発行

文献概要

特集 神経発生の基礎 総説

細胞認識の分子的基礎—細胞間接着分子の役割

著者: 竹市雅俊1

所属機関: 1京都大学理学部生物物理学教室

ページ範囲:P.194 - P.202

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 神経系をはじめさまざまな組織・器官が形成されるための前提として,細胞の運動・移動の過程がある。たとえば,網膜や脳の内部層状構造ができるためには,幹細胞としてのマトリックス細胞がいわゆるエレベーター運動を繰り返し,分化した細胞を細胞層の一方へ送りだす。神経回路の形成のためには,神経末端が標的部位へと伸長し結合する。また,神経冠細胞は胚の内部を大きく移動して各所に散らばり,神経節などの細胞に分化する。いずれの移動の過程にもゴールがあり,細胞は"目的"の位置に達するとそこに定着する。この時,細胞はどのような情報を得ることによって,ゴールを認識するのであろうか。これが細胞認識研究の重要なテーマの1つである。
 細胞認識機構に分子レベルでアプローチするためには,生体内現象をそのまま取り扱うことは不都合なことが多い。そこで,細胞培養系で生体内現象をできるだけ忠実に再現し,これを生化学・分子生物学などの分析的手法で解析できれば理想的である。しかし,培養系で再現できる生体内現象は限られており,神経末端の標的認識などという微妙な過程はかならずしもうまく再現できない。そこで,より単純な細胞認識現象,あるいはその基礎となる現象が当面の現実的な研究課題となっている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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