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対象表象の神経機構
著者: 河西春郎2
所属機関: 1 2東京大・生理
ページ範囲:P.221 - P.229
文献購入ページに移動 如何なる対象表象(object representation)の議論の際も,知覚された空間の性質と起源について何らかの考察が成されている必要がある。伝統的には物体の形状はユークリッド計量空間で公式化されているが,この計量による表現は位置変化に対して形が不変である(すなわち,堅い)という仮定を基礎としている。故にある対象の堅い形を記述する知覚情報もまたその物理的計測と同型であると一般的には考えられている。しかしながら,幻視についての議論はこの一連の仮定に疑問を投じ,絶対的であり堅い対象を置くことのできるNewtonの古典力学の空間に代わって,Riemannの相対空間の概念を用いるという他の視点を暗示する(ShawとPittenger,1977)。この概念によれば,空間の構造はそれ自身の含む物体によって導かれることになる。故に,知覚されたある対象の形はその対象の属する空間の局所的構造に反映される。かくして我々は知覚における対象表象に関して,2つの中心的な問題があると信じるようになった。第1に知覚空間の構造は知覚された対象によって変化するということ,第2には,暗に,知覚空間の構造はまた知覚対象を記録する知覚系に依存することである。
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