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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻3号

1982年06月発行

文献概要

実験講座

ヒト組織の培養法とその意義

著者: 岡部哲郎1

所属機関: 1東京大学医学部第3内科学教室

ページ範囲:P.230 - P.235

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 ヒトの組織を培養する目的は2つに分類される。1つはcell biologyの研究手段としてヒトの培養細胞を用いる場合,もう1つはmedical scienceの研究手段として用いる場合である。cell biologyの研究手段としてヒトの細胞培養を用いることが,いかなる点に於いて動物細胞を用いる場合に比べてadvantageがあるかということを念頭においておく必要がある。ヒト由来の培養細胞と動物由来の細胞の違いの1つはC-type virusの存在である。ほとんどすべての動物細胞はendogenous typeC virusをもっていると考えられる。一方ヒトの正常組織由来の細胞は,in vitroの分裂回数は定まっていて一定の寿命があるとされている。しかるに,動物由来の細胞はin vitroで変化しやすく,短期間に染色体の異数性を伴った細胞に変化し,このようになった細胞は永久に増殖能力を持つ。このように,いくつかのbiological characterがヒトと動物の培養細胞では異なる。従ってcell biologyの分野に於ても,実験目的によってはヒトの細胞を用いる必要がある場合がある。例えば,in vitroに於ける細胞の分化や老化の問題を扱う場合,培養途中で染色体が変化しては困る。又endogenous type C virusが誘導されても困るのである。従って,そのような恐れのないヒト由来細胞を用いる方がよいであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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