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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻4号

1982年08月発行

文献概要

実験講座

フルオログラフィーとフラッシング

著者: 森啓1

所属機関: 1大阪大学医学部神経薬理生化学教室

ページ範囲:P.330 - P.334

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 ニューロンは特異な形態をしており,数μmの細胞体と,時には数mにおよぶ軸索突起によって特徴づけられる。細胞体の大きさを直径1mのボールに譬えるならば,軸索の長さは東京一大阪間にも匹敵する長さであり,ニューロンという細胞を考えるうえで軸索成分が大きな重みをもつことがわかる。ニューロンの軸索および樹状突起空間は勿論物質系によって満たされているのであり,しかもこれらの物質は静的なものではなく,一定方向に流れていること(軸索流あるいは軸索内輸送)が34年も前に見い出されている10)。初期における軸索流の研究は結紮を唯一の実験手段としていたので,神経の成長と再生に関する考慮が不可分であった。その後,放射性同位元素の利用が盛んになるにつれ,軸索流の研究が飛躍的に進歩した.これらの結果,軸索流内容物は神経伝達物質およびその生産酵素系物質をはじめ,各種蛋白質,核酸,糖質,脂質から成り,流れの方向も細胞体から軸索末端に向かう下行性と逆向きの上行性の両方があることが確立してきた。また軸索流の輸送機作についてもコルヒチンをはじめとした薬理学的なアプローチから,いくつかの仮説も提出されている。軸索流の輸送速度は複数であり,速度に応じて異なる物質が流れていることを示す証拠がすでに二,三報告されていたが,全体を総括的に且つ分子レベルで捉えることが困難とされていた。これは検出されるべき放射能活性が微量であるという技術的なことに帰因している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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