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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻5号

1982年10月発行

文献概要

特集 成長因子 総説

神経成長因子

著者: 福田潤1

所属機関: 1東京大学医学部第一生理学教室

ページ範囲:P.348 - P.360

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 胎生時の脊髄神経節細胞や交感神経節細胞が生存し,成長分化をなしとげていくために,神経成長因子(NGF)と名つげられる物質が欠かせない。こういう仮説がLevi-Montalciniによって唱えられてからおおよそ30年という月日が経ち,今ではもう常識となっている。このNGFの歴史をふり返ってみると,NGFの発見は,発生生物学,神経生物学のみならず,細胞生理学,生物化学,分子生物学,医学などの広範囲の分野にはかりしれない貢献をしてきたことが改めて解る。またNGFの発見,抽出,結晶化がひきがねとなって,他の成長因子の発見に大きな刺激を与えてきたことも解る。また一方では,NGFの研究は他の広い分野の知識や実験方法,技術によって支えられ,推進されてきたことはいうまでもない。このように数多くの研究の結果,現在我々はNGFについて非常に多くのデーターを持つようになった。特にこの10年間に集められた知見は,研究方法の進歩とあいまって膨大なものであり,我々の知識は質の上でも飛躍的な増加をみた。この1〜2年の間でも,毎年100編余りの英文の論文が発表されている(Biological Abstractsより)。しかしながら現在我々の持っている知識を冷静にみつめてみると,我々はNGFの秘密について未だごく一部を解き明かしているにすぎないことが解る。我々が未だ未だ知らないことの方が多いのである。本稿ではそれらの諸点を要約して紹介するつもりである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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