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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻5号

1982年10月発行

文献概要

解説

生物毒の神経作用—クモの神経毒

著者: 川合述史1

所属機関: 1東京都神経科学総合研究所病態神経生理学研究室

ページ範囲:P.402 - P.409

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 動物のもつ毒のうちには,既知物質には見られない特異な生理作用をもつ成分が知られていて,中でも神経組織に働くニューロトキシンに関する研究は,精製や作用解析に関する技術の急速な進歩に支えられ著しい発展をとげて来ている。古くはフグ毒のテトロドトキシンの発見,利用に代表されるように,ニューロトキシンの神経生物学への貢献は多大であるが,近年,神経毒に対して世界中の注目がよせられるようになったのは,ヘビ毒ののα-ブンガロトキシンに代表されるα-トキシン類の発見が基であろう。このトキシンの利用によって,それまで実体の不明であったアセチルコリンレセプターが初めて分離・同定され,分布が明らかになり,更には難病の1つである重症筋無力症の病態解明につながった研究の経緯は改めてここで説くまでもなかろう。この他にもサソリ毒,ハチ毒,カエル皮膚毒,イソギンチャク毒などから向神経作用をもつ成分が次々に分離され,その作用機序の解明と神経機能研究への応用は着実に進展して来ている1〜5)
 本稿では,筋足動物の毒のうちクモ毒をとりあげ,その極めて特徴のある神経毒作用について最近の研究状況を紹介する。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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