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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻5号

1982年10月発行

文献概要

話題

日米セミナー「骨格筋の収縮動力学と収縮の分子的機構」

著者: 杉晴夫1

所属機関: 1帝京大学医学部生理学教室

ページ範囲:P.416 - P.419

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 筋肉の収縮が2種類の筋フィラメント間の滑りによっておこることがH.E.Huxleyらによって示されてからほぼ30年が経過した。この間,筋収縮の分子的機構は生理学者のみでなく多くの生化学者,生物物理学者,電子顕微鏡学者,X線結晶学者等の興味をひきつけ,他の生物科学の分野に例をみないほど多方面からのアプローチがなされてきた。筋収縮の原動力は,一般に太い筋フィラメントから突き出たミオシン頭部(クロスブリッジ)が首ふり運動をおこない,細いフィラメントを太いフィラメントの中央にたぐり込んでゆくためと考えられている。A.F.Huxleyの筋フィラメント滑り模型はこの滑り機構を理論的に体系づけたものであり,筋収縮研究に中心的な役割をはたしてきた。しかし,多くの研究者の努力にもかかわらずクロスブリッジの首ふり運動の証拠は得られず,筋フィラメント間の滑りをおこす原動力は依然として不明である。世界的な傾向として,研究者はHuxleyの滑り模型にもとづいて仮説あるいは実験計画をたて,得られた結果を滑り模型にそって解釈する傾向がある。このため,滑り模型に反する結果や考え方はしばしば雑誌に発表をうけつけられないことがある。また他分野の研究者の多くは,筋収縮の問題はすでに滑り模型で解決済みと考えており,筋肉研究者の研究費申請を困難にしている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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