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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻6号

1982年12月発行

特集 低栄養と生体機能

総説

飢餓と動物行動

著者: 佐藤俊昭1

所属機関: 1東北大学教養部心理学教室

ページ範囲:P.456 - P.461

文献概要

 Ⅰ.問題小史
 動物行動研究の歴史において,飢餓は専ら動物を所期の目的通りに動かすための手段として利用されてきた。そのせいもあって,行動理論のなかでは飢餓は既に存在する行動の機構を作動させる動因(drive)として位置づけられ(Hull, 1943),飢餓それ自体が行動の機構を変容させる可能性については殆んど検討されることがなかった。僅かに,貯め込み行動(hoarding)の研究者がこの点を検討し,幼若期の飢餓体験は成長後のラットの貯め込み行動を増加させることを見出していた程度である(Hunt, 1941, 1947;Marx, 1952)。
 60年代に,幼少期の慢性的飢餓が人間の知的発達を遅滞させる可能性を示唆する事実が次々と蓄積されてくると,この問題を動物実験によって解明しようとする動きが高まった。また,行動理論にとってこの問題は,発達初期の飢餓体験が成長後の行動に及ぼす効果を問う点で,初期経験研究の格好のテーマでもあった。この二重の関心から,発達初期の飢餓が動物の学習能力を永続的に低下させるかという問題にいくつかの研究が集中し,肯定的な結果をえた(Zimmermann, 1974,参照)。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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