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文献詳細

雑誌文献

生体の科学33巻6号

1982年12月発行

文献概要

解説

心筋膜のイオンチャンネル

著者: 大地陸男1

所属機関: 1順天堂大学医学部第2生理学教室

ページ範囲:P.462 - P.470

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 心筋の膜の興奮現象,活動電位は,他の興奮性細胞におけると同様に,膜電位に応じて開閉するイオンチャンネルを通過する膜電流によって形成される。心筋は多数の筋線維がgap-junctionで結合された多細胞標本である。従って従来の膜電位固定には定量的な限界があるが1,2),その限界の中でもHodgkinとHuxleyのモデルに従う多数の電流が記述されてきた3〜6)。最近では心筋細胞を酵素的に遊離し,単一細胞で膜電位固定することが可能になり7,8),またパッチクランプ法9,10)を適用し,単一チャンネルの電流を記録することも試みられている11)。これらの新しい方法は,おおむね多細胞標本での知見を支持するが,より微小なレベルでの解析を可能にしている。
 心筋に流れる膜電流の種類は,心臓の部位によって多少異なるが,まとめると,①活動電位の立ち上りに流れる内向きのNa電流,②活動電位のブラトー相や洞房結節と房室結節の活動電位の立ち上りに流れる緩徐内向き電流(Isi)またはCa電流(ICa),③再分極に関係する遅延整流作用を示す外向き電流(IKまたはIX),④同じく時間非依存性の内向き整流作用を示すK電流(IK1)が主なものである。その他にもプルキンエ線維では⑤一過性の外向き電流が流れて活動電位の初期に急速な再分極をもたらし,また洞房結節などの特殊心筋では⑥過分極で内向き電流(IhまたはIf)が誘発されるがこれは自動性の発現に関係しうる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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