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文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻1号

1983年02月発行

文献概要

特集 腸管の吸収機構

腸管吸収の形態学的基盤—吸収細胞の膜内粒子

著者: 山元寅男1

所属機関: 1九州大学医学部解剖学教室

ページ範囲:P.4 - P.10

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 腸管における吸収機構は,生理学的,生化学的立場より多くの研究が行われ,それぞれに多くの知見が得られてきた。しかし,形態学的立場よりの吸収に関する知見は非常に乏しく,顕微鏡下で把握することの可能な脂肪の吸収に関してある程度の解明が進んでいる状況である。腸管吸収の対象となる物質(主に栄養素)は,消化管内腔での消化により低分子化され,そのために,顕微鏡下に認識できないことが,形態学的研究の進展を妨げているのである。
 腸管における吸収機構には,腸管内腔表面に配列する粘膜上皮,特に,吸収上皮細胞が関与する。吸収される物質は,この細胞の管腔側表面膜を通り細胞質内に入り,ついで,細胞の側面および底面の細胞膜を通った後,粘膜固有層の結合組織内を移送され,毛細血管またはリンパ管に入っていく。中性脂肪の場合には,細胞質内で修飾されるが,糖や蛋白質の場合には修飾されることは少ない。この,いわゆる"膜を通る輸送"transmembrane transportによる吸収機構が,通常,腸管吸収のほとんどを占める。しかし,生直後の一定期間,および,吸収不全など消化管の病的状態では,蛋白質などがそのままの形で吸収されることがあるが,この場合には,膜の陥入,すなわち,エンドサイトーシスendocytosisにより吸収される。また,無胃魚類の腸管吸収にもこの様式が盛んに見られるのである。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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