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文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻1号

1983年02月発行

文献概要

特集 腸管の吸収機構

小腸微絨毛膜共輸送と微絨毛中軸線維系

著者: 西義美1

所属機関: 1愛知県がんセンター研究所

ページ範囲:P.39 - P.43

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 小腸吸収上皮細胞微絨毛の内部には多数のミクロフィラメント(MF)が微絨毛先頂部から終末網に至るまで束になって縦走して恒常的な細胞骨格,いわゆる中軸MF系を形成している。この中軸MF系の機能については,微絨毛の構造を維持すると共に,微絨毛を運動させて腸管内腔の微小環境をかくはんして消化・吸収を促進させるという考えが支配的であった1,2)。ところが,近年,例えば,MFと細胞膜受容体とが共役的な働きをするという実験的事実などに基づいて,細胞膜と細胞骨格系を一体として捉える考えが打ち出されてきた3,4)。この考えを小腸微絨毛に適用するならば,中軸MF系は微絨毛の構造維持や運動だけでなく,膜内機能要素との共役的な働きによって膜輸送などの微絨毛膜機能を調節している可能性が考えられる。事実,後述のように,それを示唆する研究もいくつか報告されている5)。このように,非筋細胞におけるMF系が膜機能を調節していることを示唆する事実が集積し,上述のような考えが定着しつつある現在,細胞膜とMF系との結合の分子構築を究明することは,膜機能を解明するためにも有意なことであると考えられる。
 ここでは,小腸微絨毛に関する多くの報告とわれわれ自身の研究をもとに,微絨毛中軸MF系の構造・組成及びこれらと膜輸送機能との関係について述べてみたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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