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文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻2号

1983年04月発行

文献概要

特集 モノアミン系

モノアミン系と脳の発達

著者: 前田敏博1

所属機関: 1滋賀医科大学解剖学教室

ページ範囲:P.91 - P.98

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 脳内アミンニューロンの数は少ない。例えばヒトの脳では総数2〜30万個ぐらいと推定される。それらの神経突起が多数分枝して百億をこえる神経細胞と関係するのであるから,その影響は広範囲かつやや非特異的なものとならざるを得ない。神経伝達の様式で云えば,ある特定の興奮を伝えるのではなく,おもにそれを修飾,調節しているものと考えられる。私はこの様な系をmodulatory transmitting systemと呼んでいる。このような系は興奮の伝達に限らず,神経組織の代謝,形態の保持などまでもっと広く影響を与えているのではないかとさえ考えられる。
 一方その個体発生,系統発生をみると,ともに早期に出現,発達する。大脳皮質の発達においては,全く未熟な外套中にアミン線維が進入しシナップスを形成していく。まだ機能していない未熟ニューロンあるいは芽細胞群に,このmodulatingsystemが関わりを持つ理由は何であろうか? これは非常に面白い問題として取り上げられ多くの実験的研究がなされたが,最初予想されたほど明確な結果は得られず,巨視的な意味での形態形成への影響については否定的なものが多く,こまかくはシナップス形成の速さとか機能的分化などについて肯定的な成績が報告されている。考えてみれば,これがアミンニューロンの本質であるとも云える。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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