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文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻3号

1983年06月発行

文献概要

特集 細胞の極性

神経発生における細胞の極性

著者: 藤田晢也1

所属機関: 1京都府立医科大学病理学教室

ページ範囲:P.173 - P.178

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 細胞の中心を核に置くと,いかなる細胞でも細胞内小器官の分布が不連続かつ非対称である以上,なんらかの極性を示すことは自明である。しかし,これら各種小器官の分布極性や表面膜の性状からみた不均一性,あるいは細胞質の量的分布の偏りなどからくる各種の極性が,相互独立でランダムな方向をむいている場合は,細胞の極性とは呼べない。これらの量的分布やその配列が,細胞内に1つの共通した方向性をもつように規制されているのが細胞極性であると理解される。
 Paul Weiss20)は,細胞と細胞が接触したときに初めてこのような極性が現われると云っているが,厳密に考えると必ずしもこのようには割り切れないようにも思える。孤立した単細胞である卵や,方向性のある基質に張り付いた単離細胞も極性を示すからである。しかし,多細胞生物の体制を考えるとき,Paul Weissのこの指摘はたいへん示唆に豊んでいる。多細胞生物の中の細胞は単独では極性をつくりだす能力を表現できない。そのためには足場(frame)が要るのである。この足場に要求される性状は少なくとも2つあるであろう。1つは,ここに"足をかける"細胞の表面を化学的に受け容れる親和性を足場の表面がもっていることであり,いま1つは,この細胞を支えたり,胞体を容れるスペースを提供できる空間的構造をつくりうるものであるという条件である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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