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文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻3号

1983年06月発行

文献概要

特集 細胞の極性

細胞極性と細胞膜ドメイン

著者: 藤田道也1

所属機関: 1浜松医科大学生化学第二講座

ページ範囲:P.189 - P.196

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 I.細胞の極性(cell polarity)
 1)細胞の極性という概念
 "細胞の極性"という用語ないし表現が厳密に定義されているかどうかはよくわからないが,それは外形だけの問題ではない。たとえば,完全な球形の細胞があったとする。これなど外から見るかぎり不対称がなく,この細胞には極性がないと言えるであろう。球状赤血球症の球状赤血球などがこれに当たるかもしれない。しかし,もしこの完全球形の細胞が有核細胞であって,その細胞質が細胞小器官の偏在などの不対称をもつならば,極性があることになる。もちろんこの場合小器官の偏在(同一小器官の1ヵ所集中など)が常在するのでなければならない。
 このように,細胞の不対称(asymmetry)には細胞外形(cell shape)の不対称だけではなく,細胞質のそれ("極性細胞質"polar cytoplasmという言葉がある1))も問題になると考えられる2,3)。一般に,「細胞質に不対称があれば,細胞外形にも不対称がある」という命題が真実であれば,細胞の形の不対称が細胞質のそれと別個に存在するとする立場からの発言は不必要になる。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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