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ネマトーダ—細胞生物学研究のモデル
著者: 三井洋司1
所属機関: 1東京都老人総合研究所
ページ範囲:P.226 - P.232
文献購入ページに移動 ネマトーダ(線虫)は,植物,動物に寄生する(parasitic)ものや自活性(free-living)のものがあり,日本では従来,農業害虫の観点からその生活史が調べられてきた。しかし近年,極めて多方面の研究者から,従来は至難なことと思われていた多細胞生物の最も基本的ないくつかの課題を解き得るモデルとして注目をあびている。それはネマトーダの中でもCaenorhabditis elegansであり,これは,発生の細胞系譜,全神経回路の立体図,筋肉—神経の遺伝子と行動の関係,性の決定機序など,分子遺伝学と細胞,又細胞と個体レベルの関係を解析できる系として期待される。そうした研究を発展させ得る基盤は,C. elegansが①短期間に突然変異体を単離でき,遺伝子解析が可能であるなど世代交替が短く,同一個体内で受精する両性生殖体であること,及び②受精から成虫に至る迄の全細胞系譜が殆んど完成するに至るなど体細胞の数が少なく(約959),生きたままで顕微鏡観察が可能な点にある3)。
いろいろなネマトーダの生活史1),C. elegansの生物学2)は他の解説に譲り,本稿では編集部の求めに応じ,C. elegansを材料とした細胞生物学的研究の展開を紹介する。生体外に単離した細胞,あるいは単細胞生物の場合はその解析が容易であろう。
いろいろなネマトーダの生活史1),C. elegansの生物学2)は他の解説に譲り,本稿では編集部の求めに応じ,C. elegansを材料とした細胞生物学的研究の展開を紹介する。生体外に単離した細胞,あるいは単細胞生物の場合はその解析が容易であろう。
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