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文献詳細

雑誌文献

生体の科学34巻4号

1983年08月発行

特集 コンピュータによる生物現象の再構成

ゾウリムシの繊毛運動—ダイニン-チューブリン架橋パターンの決定

著者: 杉野一行1 内藤豊1

所属機関: 1筑波大学生物科学系 2現:Abteilung für Biologie, Ruhr-Universität

ページ範囲:P.284 - P.290

文献概要

 繊毛は生物界に広く分布する運動性細胞小器官で,動物はそのほとんどが何らかの形で繊毛を持っている。それにも関わらず,その大きさはミクロン単位,内部構造は電顕レベルという小さなものであるために不明な点が非常に多い。一口に繊毛といってもそれを持っている生物種やそれの属している器官によって機能も動きも大きく異なる。ここでは最も典型的な繊毛運動を示すと思われるゾウリムシの繊毛を中心に話を進める。
 ゾウリムシの繊毛は三次元的な動きをする(図1)。一周期の繊毛打のうち,有効打(推進打)の時期には,主に繊毛の基部に屈曲が起こり,残りの部分はほとんど真っ直ぐのままである。そのため繊毛は,あたかも地面の上に直立した棒が倒れてゆくように,細胞表面すれすれまで曲がってゆく。続いてその位置から回復打(準備打)が始まるが,この時期には繊毛は,観測者が繊毛を上から見ると反時計回りに回転しながら,細胞表面をはい上がるようにして次の有効打の始まる位置へと移動する。有効打の開始位置は細胞表面に対して垂直よりもやや細胞の前方に傾いているのが普通である。回復打の時期の繊毛は,屈曲部分が少しずつ広がりながら次第に基部から先端へ移るので,曲った鞭のような形を取る。このため回復打時に繊毛の受ける粘性抵抗は有効打時のそれよりも小さくなるので,外液は全体としては繊毛によって有効打の方向へ押し遣られ,その反動として個体はそれと反対の方向へ進む7)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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