文献詳細
解説
文献概要
ラットにK欠乏食を数週間摂取させると,血漿K+濃度は正常時の4.6mMより約1/3へと減少し,骨格筋にも細胞内K+濃度(〔K〕i)の減少とNa+濃度(〔Na〕i)の増加がみられる1〜3)。この低K血症ラットにK+を含む正常食やKClの注射を行うと,骨格筋は濃度勾配に逆らい細胞内に蓄積されていたNa+を排出し,K+を再吸収して,数日後には正常ラット骨格筋内と同じイオン濃度を示すようになる4,5)。以上の実験結果は,①低K血症下でも,骨格筋のNa-K能動輸送にたずさわるNaポンプはその機能を正常に維持しつづけていること,②低K血症ラットの"Na蓄積"骨格筋がNaポンプの研究に適した材料であることを示す。③さらに,低K血症ラットの筋肉がヒトの周期性四肢麻痺によく似ていることから実験的病態モデルとして有用である。これらの理由から,我々は低K血症ラットの下肢骨格筋で姿勢制御を司る遅筋のヒラメ筋(M. Soleus,SOLと略)を選び,筋肉におけるNaポンプの働きをガラス微小電極法による静止膜電位の記録と,炎光分析法を用いた細胞内Na+とK+の測定により研究を行ってきた。
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